犬血便
医師や専門家が深く詳しく解説します
犬血便
医師や専門家が深く詳しく解説します

出血性ショック とは?出血性胃腸炎が原因の血便の時は注意!

公開日
更新日

 
執筆:碧井 香 (獣医師・獣医学博士)
 
 
ショックと聞くと、衝撃的な事実を知ったときなどの精神的ショックのイメージが強いと思いますが、医療現場で使われる「ショック」は、私たちが日常的に使っている「精神的ショック」とはまったく意味が異なります。
 
医療用語としての「ショック」は、様々な原因により全身の臓器への血液供給量が激減し、臓器の機能が低下して起こる病態の総称で、早急に処置を行わないと死に至る危険な状態のことを指します。また、「ショック状態」であるという表現もします。
ショック状態に陥る原因の一つが出血です。
 
ここでは、 出血性ショック について説明します。
 
 

出血性ショック とは? 人と犬には違いがある?

 
出血性ショックとは、出血が原因で全身の臓器への血液供給が激減した状態を指します。
ショック状態になると、頻脈(脈拍数の増加)、体温の低下、チアノーゼ(歯茎の蒼白)、異常な呼吸などが見られ、体を動かすことすら難しくなります。
 
このように、ショックとは生命の危機が迫っている状態のことを指し、その意味合いは人と犬に違いはありません。出血性ショックの多くの場合は交通事故などにより引き起こされるので分かりやすいと思いますが、基礎疾患の悪化によって起こる場合には気づくのに時間がかかることもあるでしょう。
 
 

スポンサーリンク



出血性胃腸炎と出血性ショックとの関係は?

 
出血性胃腸炎とは出血を伴う胃腸炎です。原因は様々です。突然血まじりの嘔吐やケチャップのような下痢を起こし、元気消失、食欲不振になります。パルボウイルス感染症や伝染性肝炎と症状が似ているので、類症鑑別が必要となります。原因に思い当たる情報がある場合には、すべて獣医師に伝えましょう。
 
出血性下痢により脱水になるので、輸液療法を行います。出血性下痢に加えて嘔吐が見られる場合には、食餌や飲水を制限します。嘔吐が見られなくなったら少しずつ水を与えたり、消化の良い食餌を与えて回復を待ちます。
 
以上の治療方法で回復する場合には出血性ショックの状態にまでは至らなかったということです。しかし、出血が著しく、急激に体内の血液量が減少し、臓器への血液供給量が減少してしまうとショック状態になります。出血性胃腸炎になったからといって必ず出血性ショックの状態になるとは限りませんが、急激な出血を伴う場合はショック状態に陥る可能性があるので、速やかに病院に行くことが大切です。
 
 

出血性ショックの原因

 
出血性ショックの原因には、外傷性出血、腹腔内出血、消化管内出血などがあります。出血性ショックは、臓器へ十分な血液供給が出来ないほど大量に出血した状態です。交通事故などにより大量に出血した場合(外傷性出血)、または外からの衝撃で腹腔内の臓器が破裂したり、腹腔内に存在した腫瘍が破裂して大量に出血した場合(腹腔内出血)、そして出血性胃腸炎のように消化管内に大量に出血した場合(消化管内出血)などが原因として考えられます。
 
 

出血性ショックへの対応、治療法

 
出血性ショックの状態になったら、飼い主さんにできることはかなり限られています。外傷性で体の外に出血しているなら、少しでも出血量を減らすために患部をおさえるという方法も考えられますが、ショックに至るほどの出血では手でおさえて止血できる程度を超えてしまっている可能性があります。
 
自分で完全に止血しようとは思わず、少しでも出血量をおさえられればという気持ちで出血部位をおさえながら、病院へ急いでください。腹腔内出血や消化管内出血の場合にはどうすることもできませんので、とにかく早急に病院へ行くことが大切です。
 
出血性ショックの状態になると、脳に血液が行き渡らず意識が低下し、体への指令が出せないため横たわった状態で動くことができません。または、四肢だけ無意識に動かす場合もあります。
 
その他、眼球、呼吸、歯茎の色、体温、排尿排便の仕方をできるだけ観察してください。ショック状態の時には、眼振(規則的に眼球が上下左右に動く)、瞳孔が散大する、瞳孔が縮瞳する、目の前に何かを見せてもまったく反応しない、呼吸が速いまたは異常に遅い、歯茎の色がいつもより濃いまたは薄い、体温が低下する、無意識に尿や便が漏れてしまうなどいつもと違うことが起きます。
 
意識がない場合には呼吸をさまたげないために、胸を圧迫しないよう注意しましょう。嘔吐が見られる場合には吐物で窒息しないようにケアし、なるべく早く病院へ行きましょう。
治療は輸液、輸血、出血部位の止血等が早急に行われます。その他、状態に応じて対応します。
 
 

まとめ

 
急激に大量に出血すると状態が悪くなりショック状態になる可能性があります。ショック状態が続くと死に至ります。自宅で様子を見ているうちに状態が悪化してしまったということにならないように、できるだけ早く病院に行って診てもらいましょう。
 
犬の出血性胃腸炎は死に至る出血性ショックを引き起こす可能性があると知っておくだけでも違ってきます。日ごろから犬の状態に気を配ることが一番大切です。
 
 
<執筆者プロフィール>
碧井 香 (あおい こう)
獣医師・獣医学博士。
現在はフリーライターなど多岐に活動。
麻布大学獣医学部卒業 獣医師免許取得、某アニマルクリニックに勤務しながら、同大学院にて獣医学博士号取得、独立行政法人某研究所勤務、アメリカの研究機関勤務を経て今に至る。
 
 

編集部オススメリンク

 
関連した情報として以下のようなものがありますので、ご参考にしてください。
 
アニマルクリニックまりも院長の獣医師コラムページの中で、犬の下痢・軟便について説明したページである[獣医師コラム] 犬の下痢・軟便、どの程度で病院に連れて行く?原因と対処法について | PetLIVES|愛犬・愛猫と心地よく暮らすWEBマガジンは、犬の血便などについて分かりやすくまとまっています。

※なお記事中の語句に張られたリンクをクリックすると、当該語句について詳しく説明した当サイト内もしくは外部サイトの記事へ移動しますので、ご活用いただければ幸いです。